ピリンザラザの睡眠不足闘争

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どうして睡眠不足になるとこんなにも脚が気怠くなるのか。

理由や解決方法などはどうでもいいのだ。

ただ誰もこのリアルで辛すぎる闘いについて語っていないがためにこのレベルの苦しみと絶望を体験しがちなのは私だけなのか?と不安になったから書き残しておこうと思う。

 


私は現在都内のなかなかディープなライブハウス兼クラブで働いている。

大体は深夜のバーカウンターで酒を作ったりしながらその日その時のDJに合わせてユラユラしてたり、暇だったら絵を描いたり新しいカクテルを作ってみたりなどしており仕事自体は充実していて楽しいものである。

また、人間関係もとても良好である。

私はいつも東京にきてから思うのだが、学校だとか仕事だとか酒飲み仲間だとか日常的に関わることになる人は本当にいい人しかいない。

誰かを簡単に貶めようとしたりだとか、虚栄心のために後先考えない人間関係を構築したりだとかそういったものが一切なく、みな本当にわかりやすく合理的で壁もなく「罪を憎んで人を憎まず」といった精神で接してくれる。

そのためにかなりのポンコツでアル中の私でも簡単にアウトラインの向こう側として雑に扱っていい人間とはされず、一緒にいて楽しさを共有しようとしてくれたりだとか必要なことはちゃんと伝えてくれたりだとかシンプルに気にかけてくれてたりして、なんだかいつもどこでも大事に可愛がってもらえて毎日感謝ばかりである。

(これに甘んじてアルコールに溺れちゃいけないな、とは思っている)

 

 

 

そんなありがたい職場にちょっと長めの正月休みという廃人期間を経て復帰した私は、廃人生活で狂いきった睡眠時間を活かしてオールナイトのシフトでも横で眠りこけそうになってる先輩を笑いながら飄々と元気に働いていた。

朝7時まで働いたとしても元々寝る時間が10時〜夕方の18時までだったりしてもはや「5時に寝れたら早い」という認識のとち狂った生活リズムになっていたおかげで変に余裕があったのだ。

しかし、シフトは夜だけ入るわけではないのである…!休日の昼間のイベントが入ったりすると正午には出勤してそこから10時間近く働く。

それが、今日という試練の1日だったー。

 

前日もオールナイトで働いていた私は5時半には家に帰ってきたのだが、いかんせん普段の睡眠時間が狂ってしまっている為に眠りにつくことが出来なかった。

また、廃人期間に頭を空っぽにするが如く無駄情報のネットサーフィンをしたり毎日ちょっとずつ読み進められる無料漫画を身漁る習慣を身につけてしまったが為、寝られないのも大して苦ではなくそう深刻に考えず「まあいけるやろ」と睡眠ゼロの状態で出勤してしまったのである。

 


なんせ寝るしかやることのなかった廃人期間を逆にコンプレックスに思っていたのも相まって「寝る時間がないほど忙しい」ということに少し興奮気味でもあった。

私は寝不足の時にはこういうのを飲むもんだ、とモンスターを買った。寝不足でバーカンに入っているとなったらタバコなんかも吸っていたら格好いいだろうと普段吸わないのにラクダさんの書いてある葉巻みたいな安いタバコも買った。気分は少し遠足前みたいである。

そうなのだ、睡眠不足のいいところはランナーズハイみたいな現象が起きて眠さを乗り越えたら勝手に脳がキマッてきたりするところでもある…!!

 


しかし、キマッていたのは買い物をしてバーを開ける準備をしながらコーヒーとモンスターを交互にガブ飲みして、ラクダさんのタバコを一服してみたときまでであった。

イベントが始まってしばらくして、重たさとはまた違う、体感で例えるなら痒みのような眠気に襲われた。全身が怠く、手を肩より上に上げるのが心底嫌なのでせっかく格好つけのために買ったタバコも最早放置されていた。

 


そして、悪の大魔王「脚むくみマン」が現れた…。

私はこのときまですっかり、「睡眠不足だと脚が半端なく浮腫む」というどうにもならない事実を忘れていたのだ。

脚むくみマンは最初ふくらはぎに現れ、私のふくらはぎを鉄みたいに重くした。

その後彼はふくらはぎを温床にしながら膝・太もも・腰へと上に伸びる勢力、下へ伸びる勢力と分散して私の身体の主に下半身における全体的な筋肉を駆逐していった。

 

バーカウンターに立ち始めてから3時間…限界が訪れた。

脚むくみマンの勢力がついに足の裏に到達したのである。


私の足の裏の全血液が助けを求めていた。

痛みとも痒みともつかぬ、私の足の裏は常にカイジのザワ…ザワ…という環境音が聴こえてきそうなくらいざわついていた。

ペリカ払えばこの苦痛から解放されるんだ!

足の裏を中心に寝不足は私の全神経を研ぎ澄ました。もはやエスポワール号でジャンケン大会をしたのちビル間綱渡りをしても勝ち残れるんじゃないかというくらいに私の足に繋がっている脳の神経細胞は完全にパラサイトしていた。

 


BLEACHでみたことがある。

強制的に神経を研ぎ澄ませ、飛んできたボールなどを異様にゆっくりに感じさせる薬を。

その作用を何千倍にもすることによって相手の動きを緩慢にさせ、簡単に勝つことが出来ると涅マユリが言っていた。

今になって思えば私はやったことがないがアレは別に夢想の類ではなく現実にドラッグを摂取したときに起こる症状と同じなのであって、そしてその症状を私はただ睡眠不足でカフェインをガブ飲みして立ち仕事をしていたというだけで「足の裏」だけ手に入れてしまったのだ。

よく「BAD入っちゃってー」なんていう人がいるがBAD状態はこんな感じなのだろうか。

 

 


昼下がりに行われるイベントは普段のアンダーグラウンド的雰囲気とは真逆で、いわゆるアニメ系のDJイベントであった。

アニメ系のイベントの客はあまり酒を飲まないため、私はカウンターの中で一人、

ひたすらに長すぎる時間を2分に一回は時計を見て自分を鼓舞し、励ましていた。

常々「時間が長すぎる」と感じることを上回る苦痛でこの世に存在するのは胃腸炎くらいだと思う。

そして、恐れていた事態が私の貧弱な臓器と浅はかな判断により発生してしまったー。

まさしく胃腸が壊れたのである。

一睡もせず、インスタントのうどんを適当に食べて家を出てモンスターやらコーヒーやら普段吸わないタバコやらを体内にドッと突っ込んでしまったせいで私の胃腸は音を上げ、数十分に一回トイレに走ることを余儀なくされてしまったのである…!

 


そうして私は大して効いてはくれなかったエナジードリンクならびにコーヒー、気をそらすどころか余計に疲れを煽ったタバコ、音を上げた胃腸、そして筋肉およびに下半身における全神経を駆逐してエスポワール号にしてしまった足のむくみなどの想像を超えた戦犯に悩まされながらも唯一の味方である「耐えれば感覚的にはかなりゆっくりとだが一応過ぎる時間」によって9時間半の労働を乗り越え、家に帰って眠りに着くことができたのであった。

 


もし睡眠不足のときのような症状が平常時だったら私は1分1秒を恨まざるを得ないな、いつも健康でいてくれてありがとうと心底思ったのである。